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浅月は、とりあえず霧谷ができそうな仕事を頼んだ。 ゲーム機から回収してきたメダルの仕分け作業だ。 たまに他店のメダルが混ざっていることがあるため、メダル貸出の両替機に入れる前にチェックをしている。 絵柄や微妙に色が違うため、すぐに見分けがつく。 お菓子を包装する浅月の横で、霧谷は座り込みザラザラと音を立てながら仕分け作業を始めた。 カウンターはL字型で、短い方が事務所の壁に接しており、事務所よりも若干狭いスペースしかない。 カウンター後ろの壁沿いにはダンボール箱が積まれているので、余計に狭かった。 意外に浅月と霧谷の距離は近い。 浅月が黙々と作業をしていると、霧谷が話しかけてきた。 「浅月さん、この仕事長いんですか?」 浅月は霧谷の方を向くことも、手を休めることもなく、ただ答える。 「もう2年くらいかな」 「へぇ~、結構長いんですね。ずっと遅番専門ですか?」 「そう。」 聞かれたこと以外は話さない浅月に、霧谷はひとりで喋り続けた。 「なんか、遅番て皆入るの嫌がってるみたいですね。終電なくなるのは痛いですけど、近くに住んでる人だっているのに。 それで今日、中番入る人もいないし、店長が一日通しだけど人手足りないんで、急遽俺が入ることになったんですよ。」 浅月は適当な相槌を打ちながら聞いている。 そのため、霧谷の独り言にならずに済んでいた。 「あ・皆さん、浅月さんと一緒になるのが嫌とかそう言うのじゃないみたいなんで、気悪くしないでくださいね!」 霧谷は冗談めかすように、少し早口で付け加えた。 浅月にとってはどうでもいいことだった。 浅月がなにも言わないので、頑張って話し続けていた霧谷も、遂に黙ってしまった。
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