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沈黙。
霧谷のメダルを弾く音とゲーム機の音だけが聞こえる。
チリンチリン
沈黙を破ったのは、カウンターに置いてあるベルの音だった。
店員不在時に鳴らす呼び鈴だ。
だが、鳴らされるのはおかしかった。
カウンターには浅月も霧谷もいる。
霧谷はしゃがみ込んでいて見えなかったのかもしれないが、浅月は立って作業をしているため呼び鈴が鳴るのは不自然だった。
霧谷が立ち上がると、少し下の方から声がした。
「すみませ~ん」
声の主を探すと、小さな女の子が必死に背伸びをしてベルを鳴らしていた。
その少し離れたところに母親らしき女性が立っている。
小さな女の子からは、カウンターが邪魔をして見えなかったらしい。
「どうしたのかな?」
浅月が無反応で作業を続けていたため、霧谷が優しめの笑顔で対応する。
「あのね、あのね。クレーンにね、うさたん引っ掛かってね、落ちないの~」
「そっか、わかった。ちょっと待ってね~」
そう女の子に答える霧谷の手に、カウンター下で景品袋が渡された。
浅月の視線は霧谷の方に向けられ、お前が行って来いと、その目が言っていた。
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