ニアミス

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女に促され、カカシは上等な部屋に通された 高価な香が部屋を満たし、薄明かりの行灯の光がユラユラと揺らいでいる 「最近は、噸とご無沙汰でしたね。 いい人でも出来ましたか?」 コロコロと鈴の音の様な声で話し掛けながら、カカシの上着を衣紋掛けに掛けた 「そんな人いたらいいんだけどねぇー」 (ほんとっ…) 「吉さんのお相手が出来るのも、今日で最後でしょうね…」 ちょっと、寂しそうに、女は呟いた 「身請けが決まったんだ?」 カカシは当たり前の様に言った カカシは数ある郭の中でも、ここしか使わない 女も、いつも決まったの相手のみだ だが、ここに通い始めて、カカシの相手は十人を裕に超えている 何故か、カカシの相手をする女達は、短期間でかなり良い身請け先が決まる (自分には、回って来ない、幸せかね…) 女は、高そうな図柄の入った襖を静かに開け、カカシに向かって、どうぞと、手を差し伸べた その部屋には、これまた高そうな布団が一組と枕が二つ、着替えの為の、着物があった いつもだったら、促されるままに布団に潜り込むカカシだったが、今夜は何故か勝手違う 「吉さん?」 女は、いつもと様子が違うカカシを心配そうに見ながら、手を取ろうと差し伸べた 女の指がカカシの手に触れそうになった瞬間、カカシは、女から飛び退いた 「吉さん!?」 自分のとった行動が、反射的に女を拒否した形になった事に自分自身が一番驚いた 「ごめんねー、何がボーとしてたみたいで、ビックリしちゃった」 取りあえず、言い訳してみた 女は今日のカカシが、いつもと違う事に薄々気が付いていたので 「吉さん、今日はゆっくりと、お話ししませんか?」 と、提案してみた (あー、最後だろうに、気ぃ使わせちゃったな…) 申し訳ないとは思ったが、カカシはその提案を歓迎した
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