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又兵衛は再び瓦礫の中を進んだ。
どこを目指そうという明確な理由はない。
相変わらず不快な臭いが充満している中を、ただ真っ直ぐに、ふと気が変われば右へ左へと反れてひたすらに進む。
時折見かける犬たちは人里に住むにしてはひどく痩せ細っていた。
かつての住処であっただろう場所にうずくまっているものや、鼻を地面に押し当てて臭いを嗅いでいるらしいものもいた。
食べ物を探しているのか、それとも主を探しているのか……
その目はどこか爛々と光っており、眠っていた本能に燃え上がっている。
だがその一方で猫は見かけなかった。
ここの辺りにも多くの猫たちの住処があったのだが、彼らはどこかに雲隠れしてしまっていた。
その身を落ち着ける場所を探しに旅に出たのだろうか。
「そこのアンタ、何やってんだ?」
又兵衛がぼんやりと物思いにふけっていると、上のほうから鋭い声がした。
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