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そこにはこの場にそぐわない程お綺麗な格好をした人間がいた。 その周りをそれには劣るが、やはり綺麗な格好をした人間が取り巻いている。 一番綺麗な太っちょが、疲れたような顔をした老人の手を握って何か話しかけた。 又兵衛の耳に「お見舞い申し上げます」といった言葉が聞こえた。 ははん、と又兵衛は笑う。 あの野郎もわしと同じように外からやって来たってわけか。 どこか白々しいような声を聞いて納得した。 表情は一緒に老人と悲しんでいるように見えても、それがどことなく他人事のような風は隠しきれていない。 一際目立つスーツに新品の作業着の上着という組み合わせがそれを一層引き立てており、実に滑稽だ。 作業着を着たところで、その人は瓦礫に手を触れることは一切無いのだから。 はるさんがテレビを指して、「笑っちゃうわね」と言っていたのがうっすらと分かったような気がした。 彼女は画面の中のお高そうなスーツを着込んで小難しい話をする男に一瞥をくれて、又兵衛の背中を撫でた。 穏やかな日の出来事だった。
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