prologue

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走馬灯、というものがある。 死ぬ寸前、今までの人生が映像と化して思い出を振り返るというものらしい。 それがおきる原因や理由なんて知りもしないし、今更知りたいとは思わない。 ただ、走馬灯が見えるなら一体何を見るのだろうとかその程度の関心があるぐらいだ。 「思い出らしい思い出なんてないけどな」 肝心の中身がないことに気づいて自嘲的な笑みが浮かぶ。 心から笑うことがなくなって随分たつせいできっとその笑みは笑顔と呼べる代物ではないだろう。 逆さから摩天楼と光の群れを一瞥して目を閉じた。 全てを受け入れるために。 自殺という、歪んだ運命そのものを。
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