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「どこだここ…」
何十回目となるため息と共にぐるりと周りを一周見渡す。
どこもかしこも、木、木、木。
東西南北、言い換えれば前後左右、巨木 が地平線の果てまでふんぞり返るように並んでいる。
「天国や地獄にはとうてい見えないんだけどな……」
体内時計で約一時間前、十二階建てのマンションの屋上から
飛び降りて俺は死んだはずなんだ。
それがどこかの森の真っ直中で目を覚ましたと思ったら、脈はあるし、心臓は元気に鼓動してやがる。
とりあえず森から出ようとするにも、目印になるようなものはない。
地面には小中動物の足跡はあるが人と思われるのは一つとしてなかった。
つまりこの近辺に人がいないことになる。
「はぁ、どうしたもんかね」
打つ手も為す術もなく、その辺の木に背を預け座り込む。
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