1:星に愛された男

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然の顔が苦痛に歪む。 しかし、妖かしも驚いたようで、噛む力が少し弱まっている。 それはそうだ。これは然の世界。 防ぐことも捕らえることも、どうにでも出来るはずである。 「どんな者を愛し、捨てられたかは知らんが、人間、誰しもそうではないぞ」 どんどん噛む力が弱まっていく。 「貴方にとって、それ以上に愛しいものはなかったのでしょう?」 妖かしの目からは涙が流れている。 見た目も段々元の姿に近づいてるようだ。 「どうだ?まだ納得いかんなら、このまま喰い殺してもらって構わんが」 然が尋ねる。 ふっと溜め息のような笑いを吐いて、 「誠、人とはわからぬものよのう…」 もう完全に元の姿に戻っている。 色も白く美しい女だ。 「どうだ?この機にまた男でも愛してみるか?」 からかったように言う。 「ぬかせ、お主と我では到底つり合わぬ…」 涙を流し、笑いながら、すうっと天に消えていった。
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