光の国

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目の前、10mほど離れた場所にドラゴンが降り立つ。 木の幹のように太い足は同じく硬そうな鱗に覆われていた。 足先には鋭い爪が三本。爪とはいえ充分武器として成立する。あれで蹴りつけられようものなら切るや打撲では済まないだろう。えぐる、という表現が合っている気がする。 「ドラゴン、元気!?」 ヒューマンが爪に怖気づいているのを横目に、フェアリーがドラゴンを呼ぶ。 わずかに近付いた彼が目線を合わせるため、重心を下げてゆっくりと顔を下ろした。 赤い鱗のドラゴンがヒューマンとフェアリーを見据える。瞳は美しい漆黒色をしていた。 「は……初めまして」 戸惑いながら挨拶をする。 「……見ない顔だな、オマエ」 「はい……だと思います」 圧倒され語尾が消える。 どうやら僕は真っ直ぐ見据えてくる瞳が苦手らしい。 「ヒューマン警戒しちゃってんじゃん。 擬態できないの?」 僕が怖がっているのに気付いたフェアリーが言う。 擬態…? そのままの意味だと姿を変えるんだろうけど。 「あれ嫌いなんだよ」 「怖がられるのとどっちがいいの?」 「………」 はぁ、と溜め息をついたドラゴンが翼をバサリと動かした。
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