光の国の城

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「うん、わかった。 では、ついてきてくれ」 フェニックスが立ち上がる。 赤と黄のマントがばさりと翻った。 「登録は俺様の部屋でしかできないからな。 急ぐぞ?」 ぽんっ、と肩に手が置かれる。 しかし、手はそのままヒューマンの上半身を上から下に通過した。 「……え゛っ」 フェニックスが顔を引きつらせる。 いや、僕だってそうしたい。 ただちょっと状況が理解できないだけだ。 ただちょっと反応できないだけだ。 「消えかけてる!」 フェニックスが手をスライドさせても、ヒューマンの体をすり抜けて一切触れることはない。 ていうか、気分悪いからやめてほしい。 「そんな時間経ってたの!? ごめんね、ヒューマン!」 フェアリーが謝る。眉尻も下がり、完全に動揺していた。 「い…いいよ、大丈夫。 登録すれば直りますか?」 「もちろんだ。 ただ、放っておけば手遅れにもなりかねん」 フェニックスが髪を掻き上げる。 彼の背中からばさりと何かが羽ばたいた。 「俺様が出血大サービスで運んでいってやる。 掴まれ、新人くん」 炎の翼を生やしたフェニックスが伸ばしてきた手は、わずかな炎に包まれていた。 「えっ」 「いや熱くないから」 「えっ」 「いや消えかけの存在も触れるようにするためだけの炎だから。 熱くないように調節してるから。 ……っやめて、その見かけだけかよ的な失望した目!」
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