サラヴィーン

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チチチ…、という 小鳥のさえずりが聞こえる。 体の背中側全体に 何かが触れている。 倒れてる…のか。 服から出ている場所、 腕やふくらはぎがチクチクする。 草? 痛い。 「……きみ、……」 誰かの声。 僕に話しかけてる、のかな。 「……きみ、大丈夫?」 ゆっくりと目を開くと、 綺麗な空が見えた。 木々に遮られた日光が 光のすじとなって 降り注いでいる。 「…………」 ああ、やっぱり倒れてる。 そっと顔を動かす。 視界の中に、 淡い桃色の髪をした 少女の顔が入った。 「あっ、起きた!」 パッと少女が笑う。 ウェーブがかった 肩までの髪が揺れた。 「…君は…」 「わたし、フェアリー! よろしくね!」 彼女が差し伸べた手を掴む。 ぐっ!と引っ張り上げられて 上半身が起き上がった。 「……フェアリー?」 「そう。君は、誰かな?」 「えっと…」 名前?僕の名前って…。 「ひゅ…」 名前…何だっけ? 「ひゅ?」 フェアリーが繰り返す。 ――そうだ。 僕の名前は。 「ヒューマン」 人間。 特に才能も無く、 特異な能力も持たない、 最弱の幻獣。
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