光の国の城

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「――“我、黄昏し者を導く”」 儀式の詠唱と言ったところか。 部屋中によく通るフェニックスの声に呼応して、炎の揺らめきが落ち着いていく。しかし、消えはしないようだ。 「“指し示す道は光に照らされた愛と平和に溢れし道。 空はあらゆる命を受け入れ、地はあらゆる命を育み、海はあらゆる命を包み込む。 己の希望と勇気を掲げるそなたを皆が祝福し鐘を鳴らす”」 しかし、まだ詠唱が続く中で異変が始まる。 「“我はそなたの歩む道に花を咲かせ歌を響かせ、時には共に歩む”」 落ち着いていたはずの炎が再び暴れ始めた。 「…っ!? “例え苦しい困難があれど、ただそなたを守るためだけに剣を構え、盾を構え、時には手を引き、背中を押す仲間を与え”」 フェニックスが一瞬動揺を見せたが、詠唱は続く。 それでも炎が鎮まることは無かった。 「(……だけど)」 熱くない。 熱いはずの炎の熱を感じない。 自分の周りをよく見ると、紫の雷がヒューマンを包み込んでいた。 バチィンッ!と鋭い音を鳴らしながら、暴れる炎からヒューマンを守っている。 「(何だこれ…っ)」 「“幸せな道を歩み……” バチィンッ!! うぐぁっ!?」 そして、飛び出した一筋の紫電がフェニックスを弾き飛ばした。
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