~槍・杖~

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~真摯な信仰の杖~Know faith とある寺に信仰で人を救おうと決意した僧侶がいた。 僧は仏門の教えを広めるために諸国を放浪し、多くの人々を啓蒙するために辻で、海で、森で、町で、人を集めては熱心に信仰を説いていた。 見返りを求めず、ただ衆生の安らぎのために身を粉にして、心を砕き続けた。 いつしか僧は、食も眠りも必要としなくなり傷も瞬く間に治るようになった。一途な信仰の奇跡である。 僧はあるとき山賊に囲まれた。 山賊に他意はなく、ひとえに運が悪かっただけである。 僧は山賊に信仰を説いた。改心を求めた。山賊は僧をせせら笑い、その首を両断してしまう。 しかし奇跡は僧を殺さない。転がった首は再び僧と繋がり、僧は殺されたことなど意にも止めず説法を続ける。 山賊は笑い僧の首を再び跳ねた。転がった首が瞬く間に繋がり説法は続く。また首を跳ねた。説法は続く、言葉を遮るように首が飛ぶ。 山賊たちはその滑稽さを笑い、僧の説法に耳を貸しはしない。どうあっても改心出来ないと知った僧はついに口を閉じる。 説法が止んだのを見てとった山賊は刃を納めたが、僧は動かない。 不審に思った一人が僧を揺らすと、そのまま倒れて動かない。 僧は死んでいた。 信仰をたった一度でも諦めた僧は、その奇跡の代価を命で支払ったのだった。 山賊は僧の杖とボロ袈裟を売り払い。一晩だけの酒宴を楽しんだという
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