なにも潰すこたぁねぇだろって話

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「「暇だなー」」 すっかり夜も更けた頃。 まだ昼間の熱が抜けない、夏の季節だった。 長屋のとある一室で、就寝までの時間を持て余していた二人の声が、打ち合わせもしていないのに見事に重なる。 どちらも男ものの声色なのだが、高音と低音のバランスがハーモニーになって響いた。 高音なのはもちろん、まだ声変わりもしていないこの部屋の住人の一人である、次屋三之助だ。 忍び服から真っ白な寝間着に着替え、下ろした髪を背中に無造作に流している。
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