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「いや、構わんだろう。ヤシュカが無償でやる気満々だと気味が悪いしな。ただし、その分の責任が発生するということを胸に刻んでおけよ」
シューさんはルー君に釘を刺しておくことも忘れない。
「了解でーす。対価に見合う仕事をさせて頂きまーす」
ルー君て、きっちりしてるのかちゃっかりしてるのか。
多分後者かな。
「では、エイダ殿に交渉してくる。お前達も明日からの用意をせねばな。スタット、ヤシュカ、戻るぞ」
「はーい」
「え、もう戻……らなければなりませんか」
元気に返事をしたルー君とは対照的に、ロシュ君が渋る。シューさんは、重ねて苦笑した。
「……スタット、どうせ明日になれば嫌でも一日中レイナとはいられるんだ。今日はもう帰れ」
「……はい」
私も名残惜しいけど、こればっかりは仕方がない。
「また明日ね」
「また、明日」
部屋から出ていく時にロシュ君が振り返ったので、笑顔で手を振ったらば。
物凄い素早さで戻ってきて、ぎゅっと抱き締められました。
「離したくない……」
「……明日なんて、すぐ来るよ」
「一瞬で、明日が来なくなる人だっている」
……ロシュ君のご両親はそうだった。だから、『幸せ』は長く続かないって、そう思ってるのかな。
「少なくとも、私は明日もいるよ? やっと逢えたんだから、当分帰る気もないし」
「……いつまでも待つとか格好付けたくせに、いざ逢えたら、離れがたくてたまらない」
「……実は私も」
気持ちは同じ。
「レイナ……」
「ロシュ君……」
「はいそこまでー。戻るぞー」
唇まで五センチといったところで、ルー君がパンパンと手を叩いた。……無情なる終了のお知らせ。
「ルーク……」
「俺悪くないかんな、隊長殿に言われて戻っただけだしー。いいところで邪魔したかもだけど、デバガメされた方が良かったってーなら、文句は聞いてやる」
ルー君はニヤリと笑った。
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