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ロシュ君はたじたじだ。
「ロシュ君、ルー君はともかく、ミカちゃんに失礼だよ?」
「それ、俺に失礼……」
「だって、ルー君遊び人みたいなんだもん。勘違いされても自分のせいじゃないのかな?」
「う」
「あら、流石レイナちゃん! よくわかってるじゃなーい」
つい辛口になって、ルー君を思いきり撃沈させてしまった。
恋人はないだろうけど、前からの知り合いにしては、ちょっと変だったし。例えるなら、『ミカちゃんがルー君を一方的に知ってた』みたいな?
ルー君、謎が多すぎる。
予定の十刻より少し前。場所は城の裏庭に当たる所にレオルさんがシューさんとディノス、レドクリフさんと(その他護衛さん達も)共に立っていた。
レオルさんは相変わらずフードを被っていたが、その端から金色の髪が一房覗いていた。
もしかしたらと思っていたが、 (誰とは言わないけど) どうやら別人のようだ。彼は黒髪だから。
この人も謎だよね。
転移先が坑道とのことで、馬は現地調達か、最悪徒歩。ピヨちゃんはまたお留守番である。
魔導陣の上に全員の荷物を置いて、準備は終了。
「ミカエラ殿、それではレイナを頼みます」
「お任せ下さい、アタシの一命に代えましても、姫をお守りしますわ」
ミカちゃんが頭を下げると、シューさんは目を細めた。
「一命に代えましてもは止めた方がいい。命と引き換えでは守ったことにならないそうだから。なあ、レイナ」
「あ、覚えてたの?」
シューさんが私を見て優しく笑う。
「勿論だ。あれは目から鱗だった」
ミカちゃんが、ほぅと小さく溜め息をついた。
「やっぱりいい男よねー、フォードック卿……」
夢見心地という表現がぴったりだろう、ミカちゃんはぼぅっとした表情でシューさんを見ている。
「ミカちゃん、ああいう感じの人が好きなの?」
「そりゃそうよ。顔良し、性格良し、財力もあって、更に剣の腕前も申し分なし! あんな完璧な男、何で売れてないのか不思議なくらいだわっ!」
おお、ミカちゃんが熱い。
「……でも、あそこまでいくとアタシには観賞用ね。隙のない男って、近寄り難いし……かと言って、自分に自信満々の女には落ちない気がするわ」
なるほど、恋愛対象にするとシューさんは高嶺の花になるのか。
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