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「おまけに、分け隔てなく優しいから、『もしかしたら私だけ特別?』なんて勘違いする女も多そう。運良く惚れられたら儲けもんて感じじゃない?」
「でも、シューさんってそこまで完璧な人じゃないよ?」
結構拗ねたり怒ったりするし、ちょっと抜けてたり。
そう言ったら、ミカちゃんに「お子ちゃまねぇ」と呆れられた。
「あのね、それは親しい人にしか見せてない姿でしょ。城の女の子に聞いてごらんなさいな、アタシとほとんど同じこと言うと思うわよ?」
「そういうもの?」
「そーゆーもん! フォードック卿がそんな可愛いとこ見せたら、城の女の子達が争奪戦を始めて泥沼になってるわよ……。あの方、同性にもモテるのに」
ああ怖いとミカちゃんが体を震わせた。
今更ながらにシューさんの人気を認識する。エイダさんはシューさんに恋愛的な意味での興味がまったくなかったので、とても新鮮だ。
私がそう言うと、ミカちゃんが苦笑した。
「ああ、あの人の美的感覚ってちょっと不思議だから、無理もないわね」とミカちゃんはどこまでも辛口。部下とは言え、エイダさんより年上だからなのかもしれない。
「アタシ誰に対してもこんなだから、上に受けは悪いし、正直何で副導士長が選んだのかわかんなかったけど、レイナちゃんを見てたら何となくわかってきたわ」
お姫様っぽくないとミカちゃんが一刀両断。……自覚はあります。
「ところで、ミカちゃん。私の方が下なんだし呼び捨てでいいよ?」
「それは遠慮しとく。ロシュ君が気にしたら可哀想だもの」
「何を?」
首を傾げたら何故かミカちゃんが絶句した。
「……アンタ警戒心緩すぎ。信用してくれるのは嬉しいけど、アタシは一応男だってこと忘れてない?」
「あ、…………あはは」
あまりにも女っぽいから本気で忘れてた。だが、流石にミカちゃんは笑っても誤魔化されてくれなかった。
「だからね、アタシの外見が男である限り、気にする人は気にするわけ。変にロシュ君とギクシャクしたくないでしょ?」
「でも、ミカちゃんの中身は違うのに……」
私が単純過ぎで、もうミカちゃんが男の人に見えてないから問題なのか。既に刷り込みが完璧だから、上書きは難しい。
「……全く困った子ね。……でも、ありがとね」
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