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そう呟いてはにかんだミカちゃんを、私は可愛いと思った。 「ミカエラと随分仲良くなったみたいですわね」 「ミカちゃん? うん、いい感じの人だよー」 さっきも女子トークで盛り上がってたし。 「レイナ様が気にするようでしたら、変更しても……と思っていましたけれども、杞憂でしたわね」 エイダさんは柔らかく苦笑した。 「『姫』扱いして遠慮がちになるのは論外だし、戦力外なのも困りますでしょう? その条件を満たす者が女子にいなかったのですわ」 ただでさえレイナ様の美貌に臆する者が多いので、とエイダさんが深い溜め息をついた。 エイダさんは自分が可愛いって自覚がある上、性格的にもはっきりしているのでポンポン物を言ってくれたけど、皆が皆出来る訳じゃない。 「でもミカエラなら、フォードック卿のおっしゃる『女子』の範疇に入れてもいいと思いましたの。実際に私達の隊の中では、ほとんど女性扱いですし」 魔導士の方が頭は柔らかいのかな、と言ったら「頭というより、本質を見るという魔導士の特徴が顕著に出た結果でしょうね」とエイダさんが答えた。 蛇足だが、ミカちゃんは裁縫もお料理も得意なんだそうだ。羨ましい。……いえ、私は苦手って訳じゃないけど、得意な訳でもないので。 「レイナ、そろそろ出発しますよ」 ロシュ君が私を呼んだ。 「それじゃエイダさん、六日後に」 「ええ、行ってらっしゃいませ」 「それじゃ、いくよ」 レオルさんが詠唱を開始すると、魔導陣が青白い光を放ち始めた。 魔導陣の上に置いていた荷物を背負い、シューさんやエイダさんに手を振った。 順調に進んでいる……のだが、さっきから気になってることが一つ。 なくなったら困るからと皆が抱えた筈の荷物なのに、……何で余ってるやつがあるんだろう? ミカちゃんも気付いたようで、皆の顔を見回して『これは?』というジェスチャーをする。ロシュ君もルー君も心当たりはないらしく、首を振った。 その時である。 ――ひょいっとディノスが魔導陣に入って来たのは。 「え、ディノス!?」 ディノスは余っていた荷物を拾い上げ、にっこりと笑った。 「やっぱりかこの馬鹿殿下ー!!」 更には全力疾走し、レドクリフさんまで魔導陣に飛び込んで来た。 何このカオス。 転移寸前に見えたのは、エイダさんやシューさんの愕然とした顔だった。
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