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「ロシュ君、ここのこと知ってるの?」
「……ええ、まあ……」
少し歯切れ悪くロシュ君が答えた。
「てことはー、魔導具がほとんど役に立たないってことじゃない? ロシュ君、出口わかる?」
ミカちゃんが尋ねると、ロシュ君は小さく頷いた。
「それなら、多分何とかなると思います」
「良かったー! それなら……」
ミカちゃんは、ディノスとレドクリフさんを睨め付けた。
「――そこの馬鹿二人に説教する暇くらいあるわよね?」
そして冒頭へと戻る。
「――いいこと、転移っていうのは繊細な操作技術がいるわけ。まかり間違って、壁の中にでも転移しちゃったらどうなると思う? ――死ぬのよ? 魔導陣が完璧であればあるほど、……細かく言ったところで理解出来るとは思わないからやめとくけど、 特にこんな特殊でしかも狭い所だと、大雑把に力を込めるだけじゃいけなくなるの。 なのにアンタ達ときたら、いきなり魔導陣に飛び込んで来て……。今生きてることをレオル導士長に感謝しなさいよ!?」
「「はい……」」
お説教された二人は、大きな体を縮めて項垂れている。
言うだけ言ったミカちゃんはと言えば、荷物を確認するようにと呼び掛けて、ロシュ君の方へ行った。
「ディノス、危ないことはもうしないでよ?」
「……一応レイナには言ってたと思うんだけど」
ぼそりとディノスが呟いた。
「え、いつ?」
「お祖父様の所へ行った時……」
「あの時? でもあの時、ディノスは『後で合流すればいいんだから』って………………!?」
思い当たった事実に暫し茫然。
――後で合流って、そういう意味だったのー!?
「だからレイナもわかってるものだとばかり……」
「あの会話の流れで、普通そんな発想にはならないよ!? ディノス!」
はっ! てことは、もしかして……イレギュラーはレドクリフさんだけなのでは!? だって、レオルさんに伝えたのはディノスの筈だし!
……これ、言わないでおこう。巻き添えをくっただけのレドクリフさんが気の毒過ぎるし。
「……あのさレイナ、僕、お祖父様に逆らったの初めてなんだ」
「っ、……そうなんだ……?」
それは、凄く勇気がいっただろうなと思った。
「レイナとローザ叔母様が来る前は、従うのが当然だと思ってたんだけど、何かそれも違うような気がしてきて……」
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