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「……それは」 「だから、一世一代の我が儘を通してみたくなって。ごめん、僕が皆を危険な目に合わせてしまったんだね……」 もしかして、ディノスの遅い反抗期なんだろうか。もしくは自分探しの旅か。いずれにせよ、刺激になったのは私とママみたいだし、少なくとも私にはディノスを責められない。 「……ちょっと、王子様。そういうことなら最初に言っておいて頂戴よ。黙ってるくらいの甲斐性、ここの皆は持ち合わせてるんだから」 いつから聞いていたのか知らないが、ミカちゃんが呆れたように溜め息をついた。 「ミカちゃんの言う通りだと思うよ? 最初にちゃんと言ってくれてたら、心の準備も出来たのに」 確かに、嘘は難しいけど、黙ってるだけなら私にも出来なくはない。そして、レドクリフさんが飛び込んでくるリスクだって予想出来た筈だ。 「でも、レドは反対するから……」 「当然でしょう。殿下をお守りするのが私の役目。なのにわざわざ護衛対象を危険に晒す護衛がどこにいるんですか」 正論だけど、もう少し言い方があるのでは。 「もー、頭堅いわねー、分隊長殿は。そんなんじゃモテないわよ」 私が言う前にミカちゃんが口を開いた。 「……大きなお世話です。私がモテようとモテまいと貴女には関係ないことだ」 しかし、ディノスがレドクリフさんとミカちゃんのやり取りに口を挟む。 「でも実際に、堅物過ぎてついてけないって言われてフラれたんだよね?」 「なっ、何で殿下がそんなことを知ってるんですか!? っじゃない、人の私生活を暴露しないで下さい!」 「ほら、やっぱりじゃない。もう少し融通が利かないと出世にも差し障るわよー♪」 ミカちゃんにもからかわれたレドクリフさんは、仏頂面でむっつりと黙りこんでしまった。 「あらやだ、怒った? そのくらい流して頂戴な、いい男が台無しよ?」 ほら笑顔、などと言いながらミカちゃんがレドクリフさんの口の両端を手で吊り上げようとする。
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