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「な、何の音だ!?」 レドクリフさんが剣を抜こうとしたのを制し、ロシュ君がまた同じ文言を繰り返した。 その間に、蒼い光が私達へと迫ってくる。不気味な音と共に。 「『……参られませ』」 「この音、なんなの? 何が来るの!?」 ミカちゃんはルー君の後ろからびくびくと辺りを伺っている。 「……久々に見るとなると、やっぱビビるなー……」 ルー君も思い出したのか、ちょっと腰が引けている。 そしてロシュ君が名を告げた。 「『ダングス』」 ああ、やっぱり。 私は唐突に去年のことを思い出した。あのダングスも透き通るような蒼い目が綺麗だったから。――助けられなかったこと、今でも少し心が痛む。 蒼がロシュ君の前で静止した。 空の青とも海の青とも違う蒼さ。本当に懐かしい。 後ろの暗い通路は、いっぱいにダングスが詰まっている感じで、ちょっと不思議なことになっている。 「お久し振りです、ダングス」 ロシュ君が微笑んだ。 『私を呼んだのは貴方でしたか……。大きくなりましたね』 ダングスは目を細める。会話と雰囲気からして、ロシュ君と初対面ではないようだ。そんでもって、多分このダングスは女の人(?)っぽい。 「ロシュ君が前に言ってたのって、このダングスさんだったの?」 ちょっと言い方が変になったけど、他に表現が思い浮かばなかったんです。ダングスはダングスだから、人じゃないし。 「そう、昔に助けてもらったんだ」 『あの時の彼はまだ小さかった。……おや、私以外の同族の気配が……?』 「それは……」 ロシュ君が言い澱んだ。 『待って、手を……』 隙間がないほどの場所なのに、ダングスは鋭い鉤爪のある手をそっと器用にロシュ君へと差し出した。 その手にロシュ君が触れる。数瞬の後、 ダングスは単眼を何度か瞬かせた。 『……そう、そんなことがあったの……』 言い難いのを察してか、ダングスはロシュ君の心から読み取る方法を取ったようだ。そういった優しさや慈愛が、ロシュ君の中のダングス像の源になっているに違いない。 『彼は貴方に感謝している。だから、気に病むことはない』 「そう、でしょうか」 『ええ。彼も闇に囚われたままより、解放を望んでいた。貴方は彼の魂を救ってくれました』
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