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ダングス同士に伝わる何かがあるのだろうか。穏やかな口調だが、彼女ははっきりと肯定してくれた。 「なら……良かった」 ロシュ君が安堵の息をつく。あの時も、ロシュ君はずっとダングスを気にかけていた。優しいものだって信じてたから。 ロシュ君の荷が軽くなったのなら、これだけでも来た甲斐があるよね。 『……それで、私は貴方達を出口まで案内すればいいのですか? それとも、話をしたいから呼び出したのですか?』 「勿論、道案内をお願いしたいのです『暗闇の導き手』」 ロシュ君が微笑を浮かべた。 ダングスも軽く頷く。 『わかりました。……因みに、あそこで動かない者も一緒でよろしいのですか?』 「「「え?」」」 皆、ダングスの台詞でやっと気付いた。――ダングスを見た衝撃で、石像のように固まってしまっているディノスのことに。 ……ダングスを見ても石化はしなかったはずだけど。 「……殿下、行きますよ」 「りょ、りょ、りょ、うかい……」 レドクリフさんはテンパっていたようだが、ディノスの様子を見て冷静になったのか、何もなかったかのように装っていた。 「凄いねー……レド」 「……そうですね……」 そしてミカちゃんはと言えば、ダングスとは反対の方向を向いている。 何だか様子が変、と言うより挙動不審。 「ミカちゃん、あれはダングスって言って……」 「ええ、文献で見たことあるから、知ってる。でもゴメンナサイ、アタシ表面がつるっとして細長い生き物苦手なの! 例えカミサマでもね!」 ミカちゃんはひっくり返った声で叫んだ。え、ポイントはそこなの? ダングスに笑われた(雰囲気がそんな感じだったの)ミカちゃんである。 あっちの世界なら、蛇や蜥蜴が駄目な人に相当すると思われる。 「……ロシュ君て、凄い方とお知り合いだったのね」 ミカちゃんは後ろから着いて来るダングスを見ないように、前だけを向いたままロシュ君に話し掛けた。 「オレだけでなく、ダングスは坑道や遺跡の守り神ですから、ここらの者は皆知り合いだと言ってもいいかもしれません」 掘り進んで行くうちに遭遇したりすることもあるそうな。 ダングスのいる坑道は落石事故がほとんどない。 エルミナスでは主に紅玉が採れる。
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