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それはちょうど3月の終わりの頃だった。
「お母さんに引き取られることになったんです。」
"お母さん"とは、詩織ちゃんが以前から『男にだらしがない』と言っていた
詩織ちゃんの実の母親だった…。
「…大丈夫なの?」
「はい。お母さんのお店手伝うことにしました。」
それは、詩織ちゃんの母親が現在働いているスナックのことだった。
「彼氏は…?」
「…別れました。」
「福岡に行くから?」
「はい。それに彼の母親にも私たちが付き合うのは最初から反対だったんで…。
福岡行って1から頑張ります!!」
「…でも、
お母さん、新しい恋人いるんじゃなかったっけ?」
「はい。でもまだ一緒に暮らしてはいないみたいなんで…。
それに、働けばお金も稼げますし、うまくいかなさそうなら一人暮らしをします!!」
俺はなんだか快く見送る気分にはなれなかった…。
俺には、彼女が福岡に行く選択が、自ら更に不幸の道を歩んでしまうように思えて…。
もしあの時、俺がなんとかすれば彼女の未来は変わったのでは…?
「そっかぁ。
どうなるかなんて行ってみないとわかんないもんね。」
でも俺にはこれ以上彼女に踏み込む権利がないような気がして…。
「じゃあ、福岡で頑張ってね。」
それ以上は余計な事は何も言わないことにした。
「はい♪
フクさんも頑張ってくださいね。
飲み過ぎには要注意ですよ?」
「ははwありがとう♪
じゃあ、元気でね。
まだ○曜日も入ってるから、来れたら顔出してよ。」
「はい♪
行けたら行きます♪」
そして、そんな曖昧な約束は守られるわけなく…
そのまま会わず、彼女は福岡に旅立っていった---。
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