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そして母と妹が帰り、午後5時を過ぎた頃、親友の(宮薙郎太(みやなぎ ろうた)と尾崎菜穂(おざき なほ)が見舞いに来てまた騒がしくなった。
扉をガチャリと開く音がして、それから郎太が喋りながら入ってきた。
「……あいつどうなってると思う? なあなあ、テンガ幽体離脱とかしてねえかな」
「不吉なこと言わないっ! それからそういう呼び方も改めなさいよね!」そう言って続けて菜穂も入ってくる。
二人と目があった瞬間、言葉が出なかった。嬉しさと共にどこか気恥ずかしさがあったからだ。
「郎太、菜穂……」
「んおっ! 生きてんじゃんてんが! ちーすっ」
郎太はキラッとブイサインをしてあいさつをかます。
「あゆむ……」
対して菜穂はまるで絶句したように目を見開き、少しうつむいたかと思うと「良かった」と呟いた。
その目には涙が溢れていた。
「お前ら、久しぶりだな」
「あはは、そんな久しぶりじゃないだろ? まぁいつも一緒だからそう感じるのかもな。 あれオナホ泣いてる?」
「い……いま、かふん……飛んできた……だけ……だし……それにその呼び方やめなさいって」
「お前の不吉なあいさつのせいだ! ってか、てんがっていうの止めてくれね?」
「それはこの命に変えてもやめられねえなぁ。ま、お前が元気でおれはなによりだ。ホッとしたぜ」最後は優しくそう言った。
「嘘つけ」
つか、命にも変えられないってどんなだ。
「いや、本心だって。な! オナホもそう思うだろ!?」郎太は菜穂に話をふった。
「……うっ…………」菜穂からの返答はない。ただすすり泣きの声だけが聞こえる。
「……あれ? オナホ泣いてる? おいおい、てんがに会って悪い夢でも思い出したか?」
「菜穂……」
菜穂は涙を袖で脱ぐって顔を上げる。
「あ、ああたしは泣いてなんかないかんね!? ちょっと目にゴミが入っただけ! 歩の心配なんてしてないからっ! べつ何も思ってないし……」
「うぉいうぉい、僕ちゃん知ってんだぜ。お前が一番ショックを受けてたってこと。学校でもずっと独りだったじゃねえか。」
「あれは調子が悪かっただけ! あのとき郎太が話し掛けてきたせいで、女子の中で色々変な噂されちゃったじゃない!」
「オレとできてるって言われて嫌か?」
「嫌よ! だって私は歩が……」
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