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「え? 彼氏? うん、卒業式に告られて以来今も幸せですよ~」
卒業式の日、洋子はずっと友人だった男性から告白をされた。美人な洋子には不釣り合いな男。茶髪でボサボサで、眉毛が細いような。
「え~やだぁ! アヤには幸せ分けてやんない! てかアヤも幸せでしょ!?」
それでも洋子はそんな男に幸せを感じていた。毎週と言っていいほどデートもしている。先週なんかは、二人で遊園地に行っていた。
「……でもさ……」
と、洋子の声のトーンが下がる。明るい声が弾んでいたこの部屋を、急に静けさが襲う。
「まだ……“あいつ”につきまとわれてんだよね……」
“あいつ”――
「うん。就職してからもずっと。本当やだ。どっか遠くに引っ越したいよ……」
明るかった洋子はどこへ行ったのか。泣き出しそうな声へと変わる。
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