無印

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誰も居ない、夕方の学校。 その学校の教室に、教師である私は男子生徒と二人きり、向かいあっていた。 生徒の名は"狭山 椋(サヤマ ムク)"。 私の担当する三年D組の1人だ。 「・・・・もう、諦めて下さいよ」 彼は見つめる私から目を逸らし、絞り出す様に呟いた。 「俺は、先生の気持ちに応えれないよ」 狭山の瞳は揺らぎ、声は震えている。 その横顔に私の心臓はどくりと大きく鳴る。 私は、彼の肩を掴み、叫んだ。 「アっっフォかぁぁぁぁああ!! 今1月だぞ!?1月ぅう! お前分かってんのか!!? 受験目前! むしろ眼球にのめり込んでるっつの!! なのになんでまだお前の進路は決まってねぇんだよぉお!!?」 鷲掴みにした狭山の肩を力の限り揺さぶる! 「ちょ、先せ、激し、優しくし「じゃかぁしぃわ!! ばかちんがぁ!!」 ぺいっと狭山を離し、椅子にかけ、私は深く呼吸をする。 いかん、しっかりしろ自分。 奴のペースに乗せられ、今日まで進路決定が出来なかったのだ。 ・・・・今日こそ決めねば! 私はキッと狭山を見据え、書類を取り出した。 「本来、これは生徒に見せないんだがな・・・見てみろ」
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