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「とりあえず最初は、霊夢さんにもう一回会ってみようと思います」
「それがいいだろうな」
少なくともあの時、霊夢は凸子の中の何かに気付いていたから、ああ言ったのだろう。
凸子の考えに、慧音も賛同する。
「そうと決まれば善は急げ。しっかり調子を整えて、出発することにしますよ」
「こらこら、あんまり急いで食べると喉に詰まらせるぞ?」
意気揚々と食事を進める凸子の様子を、慧音は苦笑しながら眺めるのであった。
食事を終わらせ、霊夢の住む博麗神社までの手書きの地図を慧音から受け取り、凸子は寺子屋の玄関に立っていた。
「本当に何から何までお世話になりました」
「行き詰ったなら、いつでも休みに来るといい。授業以外は、私も暇を持て余しているから」
慧音と握手を交わし、凸子は寺子屋を後にした。
人里と博麗神社までの道のりは、そう遠くは無い。草木がまばらに生えた道を順調に進めば、若者の足ならば一時間といったところだろう。
順調に進めば、の話だが。
「妖怪の森ほどではないが、神社までの道では、稀に妖怪と遭遇することもある。全部が人間に害のある妖怪というわけではないが……危険と判断したならば、すぐに逃げたほうがいい」
神社か人里、どちらか近い方へ逃げるんだ。慧音が最後にそう忠告をしたのを思い出し、凸子は口笛を吹きながら、のんびりと目的地を目指した。
飛んで行こうと思えば飛んでいける。しかし、今日は歩いて行こう。凸子はそう思っていた。
急いだところで解決する問題でもない。今は、幻想郷、この世界のことを1mgでも多く学びながら歩くことが大事だ。
千里の道も一歩から。その一歩をサボってはいけない。
「……とはいえ、流石にちょっと疲れますねえ」
人里から少し離れれば、そこは舗装のされていない凸凹道だ。アスファルトの感触が染み付いている今の凸子の足には、些かこたえる。ものの半刻で汗が流れ始めていた。
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