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「!」
思わず大きく後ずさる。過去に出会った氷精チルノ、妖蟲リグルと同様、見た目では、人は妖怪を判別するのは難しい。
思えば目の前の不自然に警戒するべきだった。凸子はその瞬間、それを学んだ。
「……小腹すいたわね」
ポリポリと頭を掻きながら、その少女はゆっくりと、実にゆっくりと立ち上がった。
「……めんどくさいけど、食べていいかしら……?」
「それでいいって言うほど、私はお人よしじゃありませんよ?」
懐からトランプを取り出し、凸子もすぐさま臨戦態勢をとる。
(……実力は分からないけど、とりあえず牽制から!)
数枚のトランプを瞬時に、その少女に投げつける。自分より幼いせいか、多少ためらいはあったものの……チルノですら、鋭い氷を矢のように飛ばしてくる程度の力は持っているのだ。見た目で判断してはいけない。
「あー……めんどくさ……」
ぼやきながら、少女はすっと手をかざす。
「!?」
その瞬間、その場の空気が一瞬よどんだ。見えたわけではない。凸子はそれを肌で感じたのだ。
そしてそれと同時に、矢のような勢いで少女に襲い掛かったトランプの群れは、急に動きを止めたのだ。
否、止まってはいない。ゆっくりではあるが、確かに少女に向かって飛んでいる。
それをぼんやりと横目で流しながら、少女はぬらりとトランプを横切って見せたのだ。
「……里の人間じゃないわね……あなた、誰?」
「……それはこっちの台詞ですが……一応、こっちの世界じゃ外来人って呼ばれてますよ」
仄かに漂う悪寒を悟られまいと、凸子は笑顔で彼女を睨む。
「……めんどくさいわね。外来人なのに……ちゃっかり弾幕使えるなんて……」
じっとりとした目で、少女はゆっくり凸子に歩み寄ってくる。
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