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「うわ、すごい汗」
山川丸美は自転車置き場に一人たたずむ豊橋明近の異様な汗の量に驚いた。
「丸さん、おはよう」
「おはよう、アップしてたの? 良くこの寒い中汗なんてかけるね」
「これしないと身体が思うように動かなくて、今ならタイガーマスクでも勝てそうすよ」
山伏の発汗法は、発汗作用の理由は、副賢髄からあるホルモン物質が血中に大量に放出されるからである。
俗に言うアドレナリンである。
余談だが、血液の増給を促す作用のあるアドレナリンが大量に放出される状況下に置かれると人は必ず闘争か逃走の二択を選択する。
どちらを選択しても大量のアドレナリンは分泌されるに違いないが、最も存分に発揮されるのは闘争だと言われている。
それに気が付いた山川丸美は直ぐに危険だと判断した。
興奮状態に陥った豊橋が襲って来ると言う自らの身の危険ではなく、豊橋自身の健康状態を脅かす危険である。
山川丸美は豊橋明近の眼球を見た。
瞳孔が僅かに開いている。
やはり豊橋にはアドレナリンが出ている。そう確信した山川丸美は豊橋の左手の動脈に触れた。
「なんだよ?」
「膝を曲げてしゃがんで」
山川丸美はそう指示すると豊橋は意外にも素直に応える。
「そのまま深呼吸を二十回」
豊橋明近は深呼吸を繰り返す。
すると次第に汗が引いてゆき、脈拍数は更に上がってゆく、山川丸美は効果を実感する。
「そして吸ったまま息を止めて、一気に立ち上がる」
「そして息を止めたまま十秒静止」
豊橋はこの静止している間に、視界が縮んで行くのを感じた。
身体は左右に振られて、心筋が大きく動作する。
身体が痺れるような感覚に襲われ、一種の虚脱感を引き起こした。
この山川丸美が一連の動作は立ち眩みを起こす方法であり、脳を覚醒させたり、風呂上がりにすると湯冷めを防ぐ効果もある。
「なんすかこれ?気持ち悪くなる」
「あんた何したの?」
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