一、春

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「こんな、バレーの川合秀一見たいな中学生が、何処に居ると言うんだ」 と女は言ったものの、背中に嫌な汗をかいていた。 同じ年かそれ以上かと思っていたのに、と思った。 「生徒証明書ありますよ、見る?」 男は平然と女にとってハッタリとしか聞こえないことを言う。 女は神妙な面持ちで頷き、男は隅に置いてあった鞄から、止め具がマジックテープの財布を取り出した。 財布、マジックテープかよ、子供っぽいな、と口に出そうになった所で男が目の前にこれ見よがしに一枚の厚紙を差し出した。 「ね、十五歳でしょ?」 「うーん、じゃあ見込み無いって言ったのは撤回するわ。それ良く見せて」 撤回したものの、女はまだ納得いかないような様子だった。 男は生徒証明書を差し出した。 「豊橋明近くんね、アッキーで良いかな?」 「アッキー?」 名前を確認したのか、女は男の名前を口に出した。 「ニックネームね、私も好きに呼んで良いよ」 「ああ、ニックネームね。じゃあ丸美だから、MIMARUってのは?」 男は少し考える素振りをしてから言った。 「却下、何だか芸能界のサラブレッドって異名が付きそうだから」 女は胸の前で手をクロスした。 一体何のことを言っているのか男には理解出来なかった。
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