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「どうして女の私に教えて貰おうって思ったんだよ、同じバスケと言っても男子と女子じゃ差があるのは分かってるでしょうに」
身支度を終えて使ったコートの半面をモップで拭いていた女はスレ違いざまに言った。
「今度日田間受験するので、山川丸美と知り合いってだけで優遇されると思った。と言うのが建前で本音は単に下心かな」
「建前と本音が、両方最低……」
女は酷評するも、これがこの男の芯の本音なのだろうか。と考え、更に気に入る理由になった。
「ま、でもその気は無くなった。と言うか失せちゃった」
「どっちのことよ」
女は眉をしかめた。
「本音の方っす」
わざと曖昧にする男に、女は先程の男の発言をさかのぼる羽目になりもどかしい気分になった。
「どの辺を見てさ」
女は眉をしかめ続けた。
「やっぱ何でも無いっす」
「なにそれ、気になる」
「嫌、本当に、すんません」
急に謝った男のその表情はどこかばつの悪そうな、後ろめたさもあって、女もそれ以上は無理強いして聞くことが出来なかった。
「それより」
と重くなった空気を断ち切るように男が切り出した。
「丸さん、明日も来るの?」
男は早速先程決めたニックネームを使い促す。
女も察して、少し考える素振りをする。
「明日はクリスマスな訳じゃん、普通用事があるって思わない?」
「うん、丸さんに彼氏が居るとは思って無いよ」
「いや彼氏が居る居ないを促した訳じゃ無いんだけど。居ないけどさ」
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