占い師と娘と使い魔(仮)と

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. 「占いなんて、バカバカしい」  つぶやいた沙織に、貴代美は申し訳なさそうな顔をした。 「ごめん。やっぱ、そんな気になれないよね……」  新しくできた占いの館に行ってみたいけど、1人で行く勇気がないから一緒に行って欲しい。  そう言ってここまで無理やり引っ張ってきたのは貴代美だが、父親を亡くしたばかりの沙織を、励ましたいという気持ちもあった。  けれど、沙織の、興味なさげな態度に、余計なことをしたかと後悔する。 「帰ろう」 「別に、いいよ」  父親が死んだ。  けれど、それがどうしたというのだ。  どのみち、仕事に行く日はもちろん、休みの日だってほとんど顔を合わせたことはなかったのだ。  母だって、父の死を悼むより先に、生活の心配をしていた。 生命保険や会社からの見舞金、学校のPTAからの見舞金……。  ああ、葬式のことも、気にしていたか。  いったいいくらかかるのかと、ため息ばかり吐いていた。 .
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