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俺が京都に向かったのは春だった
ガキの頃から俺が走り回った山が薄紅に染まってきれいだった
幹太と志村先生に挨拶をしに行った
『新撰組に入ったら名字を語っていいんです。………………それで……その…』
『もちろん志村の名字で行くんだろうね?清太君?』
『先生……』
『そうだよな??清太。俺とお前は兄弟みたいなもんだろう?』
『幹太……おぅ。』
出してもらったお茶には手つけてもねぇのに…
俺の目は水分ばかり多いみたいだ。
『志村清太殿』
先生に呼ばれた
『へ……はぃ』
ニヤリと笑った先生は俺の手に剣術稽古の道具を押し付けた
『これ……』
『餞別です。遠慮なく受け取りなさい。ウチには君の門出を祝う様な品はないから………道場から失敬してきたものだ。本当に遠慮はいらないんだよ』
そう小声で言って先生は笑った
幹太がニヤリと笑って俺の肩を掴んだ
俺の他人より長かった子供時代は終わったのだと今知った
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