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次の日の朝早く私達は大阪を発ち京都に向けて出発しようと支度をしていた
『沖田はん…。京都にお帰りになるんやってね』
『暮葉さん…。お世話になりました。今度局長と来る時はちゃんとお花つけますね』
『あっ、僕台所に行って握り飯作ってもらってきますね』
清太が勝手に大人の階段を1つ登ったようだ
『沖田はん。ウチは芸者やけどありがたい事に沢山お花をいただき借金の残りも僅かになりました。ご飯も美味しく作れますし寂しい夜は唄もきかせて差し上げれます。嫁にしてくれとはいいません。ただ…お側において欲しいんや』
『暮葉さん。屯所について来る気ですかぁ?新撰組の屯所は女人は立ち入れませんよ』
『けど…!!局長さんや他の幹部の方は離れをお建てになって奥さんやお妾はんと……!!』
『暮葉さん。私は任務以外で屯所を離れる事はありません。家だって他に建てる気は更々ない』
『いけずやなぁ…』
暮葉は姿勢と表情を但しみつゆびついた
『すんませんでした……しつこくして……私みたいな女が新撰組の隊長さんとひとときでも一緒になんて…おかしな夢をみてしもて…』
上げた顔は美しくいつも通りの笑顔だった
『…暮葉さん1つお願いがあります。なにか唄ってくれませんか結局あなたの唄聞いてなかったなぁって。もちろんお花は払います』彼女の唄は悲しい恋の唄だと思い込んでいたが
戦に向かう男をはやす流行り唄だった
素晴らしい
どこを探したってこんな女はいないかもしれない
『やはり…いい声ですね。ありがとうございます。
それでは』
まだ唄っている彼女の前に金を置いて私は背中を向けた。
この先きっと会うこともない聞くこともない艶やかな声に耳をそばだてながら
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