Sちゃんへ。

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  「何かでっかい事してみせる」 それがSちゃんの口癖やったね。 身体小さいくせに言う事大きくて。 身体小さいくせにプライド高くて。 でもSちゃん。 Sちゃんは最後の最後にでっかい事してみせたね。 あたし達に'Sちゃん'って言う大きなものを残していったもん。 遺されたあたし達は、もうSちゃんには勝てないよ。 思い出とか、人の輪とか沢山残してくれたけど。 集まっても話題はSちゃんの事ばっかり。 さっきまでKマスターの所で飲んでたよ。 Sちゃんが好きだったチンザノのロッソを飲みに。 一度もKマスターの所には行った事無かったけど、ロッソオーダーした時点でSちゃんの事聞いて来た事にKマスターはすぐに気付いてくれたよ。 だからみんなでロッソで乾杯したよ。 Sちゃんが好きだったチンザノのロッソでね。 こんな事になるなら、一度でも一緒に行けば良かったと思う。 ずっと誘ってくれてたのに、ずっと断ってたもんね。 こんな事になるなら。 こんな事になるならって、何度思ったか。 私以上に、みんなどんなに思ってるか。 みんながみんな、自分のせいだと自分を責めて。 みんながみんな、お前のせいだと自分を責めて欲しがってる。 みんな、ギリギリよ。 ほんと、身体小さいくせに遺したものは大きすぎ。 Sちゃんの香り。 GONESHの8番。 お香なんか焚いた事なかったけど、少しでもSちゃんの思い出に浸りたくて焚いてみたよ。 そこにSちゃんが居るみたいで、すごく落ち着く。 あたしは今、Sちゃんが生きてた事の足跡を集めてるのかもしれない。 あたしが一番、Sちゃんの死を頭では解ってはいるけど、認めたくないのかもしれない。 Sちゃんはすごく奥手だったね。 お酒が入ってないと本音は言わないし、女の子も口説けない。 女の子は大好きだったのにね。 そんなSちゃんが私に唯一、曲を贈ってくれた事があったね。 まあSちゃんもお酒入ってたから、覚えてたのかどうかもわからないけど。  
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