第8話 転入生:鳴澤 多久也(ナルサワ タクヤ)

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「…席は…」 先生が辺りを見渡す。 それにあわせ目をハートにさせた女子達が顔まで紅潮させて,先生の次のセリフを待つ! キク乃は,その様子に頬杖しながらため息をついていた。 そして,一瞬顔をあげた時先生と目線がかち合う! 「……えっ?」 「じゃあ,鳴澤の席は鈴の隣りね!…わからないことがあれば聞いてみるといい。」 そのセリフを聞いてクラス全体がどよめく。 …その内の半分は,鳴澤に対して好感度を持っていた女子達で今,突然背中に針が刺さるような鋭い視線がキク乃に集中する! 「…うっわぁサイアク。」 キク乃が小さくつぶやく。さすがに,この状況で転入生を傷つけたら後々シャレにならない事態に陥る! 女子達の猛攻撃がキク乃を襲うだろう。 それは願い下げだ!! 頭の中で様々な憶測を作っていると,いつの間にかすぐ近くに鳴澤が立っていた。 …爽やかな笑顔。 「よろしく鈴さん!!」 「よろしく…鳴澤…君。」 ぎこちないやり取りの中,四方八方から飛んでくる目線を身をもって実感する… (…早くこの時間が過ぎて欲しい) 頭を悩ませるキク乃。 …だが,不幸はそれだけではなかった… 「先生。まだ,学校に馴れていないので学校案内して欲しいんですが…。」 鳴澤がしっかりと手を挙げ意見を述べる! その意見に先生は,1つ返事でOKした。 「うん!!いいよ。」 『先生軽っ!!!!』 クラス全体が心の内でつっこむ! 「それで案内人は,鈴。お前に任せる!…さっ,他は授業やります。」 (本人の意見は無視ですかァァァァ!!) …心の叫びは,誰にも届くことがなく儚く散る。 未だになくなる事がない …それどころか,さらに膨れ上がった視線を背中で浴びつつキク乃は立ち上がった! こんな事で折れてしまう神経は,あいにくキク乃は持ち合わせちゃいない!!
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