落ちていました。

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うつ伏せにばったり倒れたまま、動かない。 妖精の話だと、かなり盛大に転んだようだ。頭を打ったりしていないだろうかと、店主は心配になった。 ステップを降りて、倒れている女性客の前に膝をつき、 「お客さま?」 と声をかけた。 返事はない。 店に運んだ方が良いか、しかしあまり振動を与えるのも、と考えていると、 ぐうううう~う。 という、音がした。 「……」 「……」 無言の店主。 無言の倒れたままの客。 しかし客の耳は、真っ赤になっている。 咳払いをしてから店主は、もう一度声をかけた。 「あの~……お客さま?」 「……」 客は動かない。 「うちは、まだ開店していないんですが……」 「……」 「たまたま、朝食を作ろうと思ってまして」 「……」 「紅茶をいれて、蒸らしてまして」 「……」 「昨日の残りのベーグルで、サンドイッチを作ろうとしていた所だったんですよ」 「……!!!」 ぐぐぐ~ううう。きゅるきゅる。 聞き間違えようのない、腹の虫の音。 「せっかくですから、お出ししようかなとか思っ……」 「ありがとうございますっ今すぐ入ります入れて下さいってか食べさせてくださいいいいい~~~っっっ!!!」 がばっ! と顔を上げるとその女性客は起き上がり、店主の腕をつかんで叫んだ。 鬼気迫る様子だった。
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