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店主は扉を見やった。
しかしすぐに、目線をポットに戻した。
砂時計の砂は、落ち続けている。
ちょうど良い蒸らし時間でカップに注ぐのが、美味しい紅茶の第一歩。
妙な音になど、かまっていられない。
ごとり。
再び音がした。
店主は無視した。
ごとり。ごとり。
さらに音がした。
店主はやっぱり、無視した。
すると相手(がいるかどうかわからないが)は意地になったのだろうか。
執拗に扉を震わせ、音をたて始めた。
ごとり。
ごとり。がた。
ごとごとがたがたごとがた……、
ずしゃあああっ!
「……うえはわばっ、にゃにゃにゃにゃ~~~っっ!!!」
ごろり、どたん、ざしょっ!
「……………。」
店主は顔を上げた。
ごとり、はまあ、良いとしよう。ここは魔法小路だ。妙な呪文をかけられた郵便受けや植木鉢が、はずみながら道を行くこともあるだろう。
ごとごと、がたがた、もしかり。
ずしゃあああっ、も……まあ、良いとしよう。最後のごろりとか、どたんも。
しかし、あの雄叫びは、なんだ?
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