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店主は扉に向かうと、
そっと開いてみた。
外は、いつも通り。
怪しげな店が、一見怪しげでないたたずまいで、しかしどことなく不穏な気配を放ちながら並び、
空は晴れているのだか、曇っているのだか、微妙な色に歪み、
たまに『ぐわ~っけけけけっ!』と、何かの鳥の声らしきものが、どこからともなく響く。
店主が育てた花やハーブの鉢植えが、自然な感じに扉の外に並んでいるが、
自然すぎて浮いている。
いつも通りの風景だった。
一体、何がと思いつつ、目線を下げると、
何かが落ちていた。
人だ。たぶん。
若い女性だろう。おそらく。
そこにはややタイトなスカートの、黒いスーツに身を包み、
かかとの低いパンプスをはき、
地味だがセンスの良いバッグを抱えた小柄な女性が、
セミロングの髪をぐしゃぐしゃに振り乱し、
泥まみれになって転がっていた。
……どうやら滑って転び、地面に突っ込んだ挙げ句、目を回したらしい。
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