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慌てて後ろを振り返ると女が立っていた。
20代くらいだろうか、髪は長く、白いワンピースに花柄のスカートをはいている。
「死なないんですか?あんなに頑張ったのに」
女は穴の開いた金網を指差した。
女の冷たい視線は、彼女を呆然と見ることしかできない俺の目につきささってくる。
「まあ、ありがたいです。手間が省けて」
女はそう言うとそのままその穴に向かって、穴をくぐろうとした。
俺はその時、女がなぜここにいるのかに気づいた。
女も死のうとしているんだ。
とっさに女の細い手首を掴んで後ろに引っ張ると、二人で尻餅をついた。
「何するんですか!?」
女は信じられないといった顔でこちらを見た。
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