7人が本棚に入れています
本棚に追加
────ジリリリリリ!
新しく買った目覚まし時計は、前の1,5倍ほどうるさく、目覚めるよりも苛立ちが先行した。
「……うぅ、眠い」
よろめきながらカーテンを開けると、心地よかった春の日差しももうそこにはなく夏独特の蒸し暑さが漂っていた。
「…うぅ、着替えなきゃ」
「咲久、早くしないと遅刻する」
「もっと元気になるような起こし方を……………ってうわぁぁっ!いつからいた!」
心臓飛び出るかと思いながら見るとそこには、一応僕の彼女である、友紀がいつもの無表情で、その綺麗な青がかった長い髪を揺らしながら僕の顔をじっと見ていた。
「咲久が眠いって言った所から」
「……随分前からいたんですね」
最近こそはやっと友紀の事が分かったと思っていたんだが、告白した次の日からの寝起きドッキリともいえるこの起こし方に今も同感出来ないでいる。
もう1週間たったのだ。あの告白した日から。
『付き合っ───』
『いいよ』
『…………え?』
人生で初めてだった告白は5秒で終わった。
そして人生初めての告白だったからもう何千回も練習していたが、結果がこれだった。
だから告白しておいてなんだけど僕には、あれから1週間、お付き合いできる喜びより本当に良かったのかと言う疑問が遥かに大きかったりする。
いやぁ付き合うっていったら……やっぱりキャッキャウフフみたいな展開があるんじゃないんだろうか。
しかし特にイチャイチャする事も無し、手を繋いだ事も無いまま1週間が過ぎ僕の……こう、何とも言えない疑問は増えるばかりだ。
やっぱりゲームのやりすぎかなぁ。最近はそんな事をよく考えるよ。
「咲久、早く」
「あ、うん」
そんな事より今は遅刻しないように行かなければ。友紀と同じ学年になっちゃうよ。
そして僕の疑問は隅に置いたまま、また日常が始まるのだった。
最初のコメントを投稿しよう!