万死一生-ニエのシジョウ-

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 椎名が避けられているわけではない。その口調と少々かっこつけた仕草に目を瞑れれば、気のいい友人として付き合えるだろう。  避けられているのは、青年の方だった。  リギル=トウィンクル。今では数少ない、「本物」の魔法使いだ。  能力者が珍しくない、むしろ当たり前である四宮だが、魔法使いはいなかった。ほとんどの魔法使いが十八世紀終わりに起きた「魔女狩り」で殺されてしまったからだ。  研究書物も焚書にされ、魔法は滅んだと言われていた。残っていた魔法使いも出てこなくなり、それまで狩人の中心であった魔法使いはいなくなってしまった、と椎名は聞いている。  それは二十世紀に入っても同様で、マジョリティーとマイノリティーが入れ替わってしまってから随分経つ。もうあと十年もすれば二十一世紀に入るという時に、リギルは四宮に現れた。
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