第5章

26/33
前へ
/529ページ
次へ
弁償するかしないかは置いておくとして、このままここで戦闘を続ければ確実に町に被害が出るだろう。 主に爺さんの攻撃で。 そうなれば後々面倒な事になるのは確かだ。 俺は基本的に面倒事はお断りなんだよ。 そういうわけで俺に向かって魔法を放とうとする爺さんを残して、壁に開いた穴から屋外へと出る。 「逃げるんじゃねぇ!!」 背後からは爺さんの怒鳴り声とともに何かが放たれるが、後ろは振り返らずに勢いをつけたまま跳んで屋根の上へと逃れる。 直後に聞こえる破砕音。 続いて爺さんが身体強化を施して屋根の上にいる俺を追随してくる。 俺が屋根の上に来た理由は単純、下の路地を走るよりもこっちの方が速いし被害も出難いから。 屋根の上に着地すると同時に斬りかかってくる爺さんを躱して外壁へと走り始める。 もはや怒鳴りもせずに黙々と攻撃を放ってくる爺さんを避けながら外壁を越えて町の外へ。 そのまましばらく走り続けて町から数キロ離れた辺りで走るのを止める。 止まった場所は広い草原。 もう十分町からは離れたしここなら周りに被害が出ることも無い。 俺が止まったのを見て爺さんも少し離れた所で足を止めて刀をかまえる。 さっきから思う存分攻撃してきたんだ。 今度はこっちの番だろ。 短く『武装』とだけ呟き、ストラップから剣へと変化したそれを手に、俺は爺さんへと斬りかかる。 一気に距離を詰め、勢いを乗せ上から振り下ろした剣を爺さんは刀の鞘で防ぐ。 それなりに威力はあったと思ったんだけどな……悔しい。 だがこのぐらいで攻撃を止めたりはしない。 「第一式の一番、ジル・カイブル」 俺の言葉にポケットの中のソラが反応して目の前に魔法陣を展開、そのまま『風の刃』を爺さんに向かって放つ。 鍔迫り合いの状態でのほぼ零距離からの攻撃だったが、爺さんは体の向きを変えて紙一重で躱す。 そう、躱したのだがそこには少なからず隙が生まれた。 当然その隙を逃さずに攻撃を叩き込む。 瞬時に高密度の魔力を剣の刃に込め、先ほどと同じようにして爺さんに向けて放つ。 タイミングはよかった、普通の人では絶対にどうしようもできないタイミングだった。 しかし爺さんはやはり『普通の人』のカテゴリに入るような人物ではなかったらしい。 「っ!! らぁっ!!」 体勢が若干崩れていたにも関わらず無理矢理居合切りを放ち、間近に迫っていた俺の衝撃波を吹き飛ばした。
/529ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11544人が本棚に入れています
本棚に追加