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「ッ!?
嘗めるな!!
『居合・滅』!!」
俺が放った光の向こうから爺さんの声が聞こえてきた。
目論見通り爺さんはこの技を打ち破るために何かしらの技を放つみたいだ。
よし、この間に俺も動くとしよう。
上手くいけばこのまま爺さんを無力化出来そうだしな。
爺さんの位置からは光で俺の姿は見えない。
今のうちに操った風を足場に爺さんの上空へと移動する。
下では爺さんがあの居合切りを何度も何度も連続で放ち、それこそ隙間が無いほどの衝撃波の壁を作って俺が放った魔力へとぶつけていた。
爺さん、無駄に大がかりな技を出してご苦労様です。
俺と爺さんの技、拮抗したのは一瞬。
下手したら拮抗すらしていないかもしれない。
そう思えるほどあっさりと爺さんの技が俺の技を打ち破っていった。
……今だな。
足場にしていた風を蹴り眼下に見える爺さんに向かって飛び降りる。
呆気なく技を打ち破った事に動揺を隠せていない爺さんはまだ気づいていない。
「第一式の二番、展開」
爺さんまであと少しという所で魔法陣を展開、いつでも発動できるようにしておく。
「ッ、上か!!」
上から聞こえてきた声によって爺さんは気付いたようだがすでに間に合わない。
刀が抜かれるより先に着地し、剣を振って爺さんの手から刀を弾き飛ばす。
「ジル・カイブル。
……チェックメイト、だな?」
そのまま『風の棘』という魔法を発動、文字通り風で出来た半透明の棘を爺さんの首に突き付けてそう告げた。
「……殺すなら殺せ」
自分の負けが決まった途端に爺さんはそんな言葉を口にする。
「だからさ、こっちとしては話を聞いてもらいたいだけなんだって」
「…………」
『殺せ』なんて言ってるが一応は冷静になってはいる、と思う。
だからもう一度話をしたいと言ったのだが、爺さんは聞く耳を持たない。
はぁ……まったく、面倒な爺さんだ。
このままでは話をしても聞いてくれそうにないので、残り時間はまだ二十分以上はあるがいったん猫の姿に……って、あぁ……
わざわざあんな事しなくても最初からこうすれば良かったんだ、ちくしょう。
「『人は獣に』」
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