第5章

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俺の言葉を全てスルーしていた爺さんだったが、青い光に包まれて猫に戻った姿を見て目を見開いている。 たっぷり数秒俺の姿を見て一言。 「て、てめぇは……昨日の坊主か!?」 「その通りだ。 ふぅ、これでやっと話ができる……」 最初から猫の姿に戻れば今の戦闘を回避出来たのになぁ…… だがそのおかげであの姿でのスペックがある程度分かったから良いとしよう。 「……で、当然説明はするんだろうな?」 「当たり前だろ。 俺としては説明したかったのに爺さんが聞こうとしなかったんだ。 そっちが悪い」 「…………」 俺の言っている事は事実なので爺さんは何も反論できない。 しかしこのままでは話が進まないのでとりあえず説明に入る。 ポケットに入れていたソラを取り出し、爺さんにも見えやすいようにいつもより少し大きめにした。 「なんなんだその本は?」 「爺さんも見てただろうが。あの虎を消せた理由を今から説明するから大人しく聞いてくれ」 そう言いながら目的のページを開いて爺さんに見せる。 「これは……白虎の絵か?」 開いたページには写真と見間違うほどそっくりな絵が描かれている。 ただこれはただの絵などではなく…… 「これはあの虎そのものだ」 「……どういう事だ?」 「だからな、これはあの男が呼び出した虎そのものだ。 この本の能力で姿形そのままで本の中に取り込んだんだよ」 自分でも驚いたのだがあの黒い靄によって消されたものは全てソラのページの中に保存されるらしい。 しかも取り込まれたものは『絵』として保存されるので『絵空事』を使う事によって具現化させる事も出来た。 ただ気を付けないといけない事も幾つかある。 普通にソラに絵を描いた場合は何度でも具現化出来るのだが、黒い靄を使って保存したものはあくまでも具現化出来るのは一度きり。 今のところ黒い靄を使った場合はソラの中に対象を『仮保存』をしているのだと俺は考えている。 だからこそ一度具現化させれば『仮保存』されていたデータは消えてしまう。 もしかしたらまだ他に俺が知らない何かがあるのかもしれないし無いのかもしれない。 自分の魔器なのにブラックボックスになっている部分があるって事には納得出来ないがどうしようもない。 ソラについては追々調べるしかないのが現状だ。 ……話が逸れたな。 今は爺さんへの説明をさっさと終わらせよう。
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