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当然俺は探したよ。
すぐにあいつの家族に知らせて、警察と協力してとにかく探した。
だけどあいつは何処にもいなかった。
文字通り忽然と姿を『消した』んだ。
更に不思議な事に一週間もしないうちに警察は捜査を止めた。
俺は困惑しながらも警察へ抗議に行ったよ。
だけどその警察から返ってきたのはたった一言。
『そんな人は存在しません』
ただそれだけ。
いくら何でも異常だと思ったよ。
確かにあいつは存在したんだ。
いなかったなど絶対に有り得ない。
しかし警察の次は学校の友達。
『あいつの事なんて知らない』
『そんな奴いたっけ?』など、誰もあいつの事を覚えていなかった。
あいつに毎日のように告白しに行った奴でさえ。
誰一人としてあいつを覚えている奴はいない。
……いや、正確には皆して『忘れた』んだ。
あいつが消えて半月もしないうちに。
そんな友人たちの証言に嫌な予感がした俺は、学校から帰宅するなり自らの両親に尋ねた。
『俺の幼馴染を覚えているよな?』と。
だが俺からのその問いに二人は口を揃えてこう答える。
『お隣にお子さんはいないよ』
この時点で二十日が過ぎていた。
そしてそれから一週間もしないうちに―――
あいつの両親からも『あいつ』の存在は消えたんだ。
この世界の何処にも『あいつ』を覚えている奴はいない。
ただ一人。
俺を除いて。
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