序章

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……あいつが消えてそろそろ一月が経つ。 皆があいつの事を綺麗に忘れてしまっていたが、相変わらず俺だけははっきりと覚えている。 産まれてからほとんど一緒に過ごしたあいつの事を。 例え皆があいつの事を忘れたとしても、せめて俺だけは絶対に忘れはしない。 だからそのために俺の大事な親友を……自らの記憶に刻み込もう。 桐生 詩音(きりゅう しおん)。 それがあいつの名前。 木原 海斗(きはら かいと)。 それが俺の名前。 あいつは腰の辺りまで伸ばしていた綺麗な茶髪をいつもポニーテールにしていた。 本人曰く『動き易いんだよ』と言っていたな。 身長は百七十ほどで俺とほとんど変わらない。 確か最後に測った時は僅かに俺の方が高かったかな? 運動と勉強に関しては五分五分といったところ。 だからかも知れないが負けず嫌いな俺達は色々な事で競い合っていたんだ。 そうして様々な事を同じようにしてきた俺達でも、ただ一つ喧嘩だけはあいつにさせなかったんだ。 あいつは人一倍優しく、困っている人がいたら迷わず助ける。 そんなあいつに人を傷つけてほしくは無かった。 だがそれでもトラブルは起きてしまう。 目の前で困っている人を助けた結果、他の人物から恨みを買ってしまう事もある。 そういう時は俺があいつの代わりに火の粉を払った。 ……結果、一時期不良のレッテルも貼られたけどな。 だけど俺はそうやってあいつを守ってきたんだ。 あの時まではこんな日々が続いていくものだと信じて疑わなかった。 こうしてあいつの事を思い出せばはっきりとわかる。 俺は、詩音の事が―――
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