序章

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あれから更に数日が経ち、満開の桜が綺麗な今日この頃。 俺は今日執り行われる大学の入学式のために朝早くから準備をしていた。 この場所からあいつが居なくなったとしても時間は関係無く経ってしまう。 ―――本当ならあいつと一緒にするはずだったんだけどな。 そんな事を考えながら色々と準備をしているなか、ふと鏡の前で立ち止まる。 目の前の鏡に映っているのはこれといって変わり映えしないいつもの俺の姿。 適当に切って整えた黒い髪にやる気の無さ気な至って普通の顔。 唯一俺の中で特徴的なのは糸目だって事ぐらい。 俺としては普通に目を開いているつもりなんだが、他人から見ると閉じているようにしか見えないらしい。 不思議な事もあるもんだよな……うん。 まぁ、それはどうでもいいから置いておくとして。 様々なスポーツをしていたおかげなのか、体はそれなりに引き締まっていて余分な脂肪は少ない。 ナルシストのように自己陶酔しているわけでは断じてないが、客観的に見て全体的な容姿は中の上ってぐらいだと思う。 だと言うのにこれまで彼女どころか告白をした事もされた事も無い。 しかしその事を卑屈に思った事なんて一度も無い。 いつも隣にはあいつがいて、俺へと笑いかけてくれる。 それだけで良かったんだ。 だけどここにあいつはもういない。 何かが抜け落ちたかのように胸へぽっかりと穴が空いてるような感覚。 虚無感っていうのはこんな感じの事を言うんだろうな。 ……と、いけないいけない。 準備の途中だと言うのについ考え込んでしまっていた。 まだやらないといけない事はいくつもあるのに…… そこで俺は頭の中で渦巻く思考を中断して、気分を切り替えるために数回頬を叩いてから準備を再開した。
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