始まりは血溜まりから

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対象までの距離は約200ヤード 陸風と海風の入れ替わる朝凪の時間は風もなく、視界を遮る障害もない 狙撃には最高のコンディションであった そしてマークしていた建物から1人、いや正確には2人の人間が出てきた 事前説明の通りならばその人物は男で、重要書類の入ったアタッシュケースを持っているはずだった だが出てきたのは女で、その両腕に抱えられていたのは赤ん坊だった 俺は何の迷いもなく引き金から指を離し その場から撤収しようとした だが隣でスポッターをしていた上官は言った 「撃て」 その言葉には迷いや疑いはなかった 俺は命令を拒否し 不名誉除隊を賜った 軍隊は機械であり 軍人は部品である とはかつての統合元帥が言った言葉だ 壊れたり不良のある部品は取り替えなければならない それだけだ
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