第壱章 ハジマリの霊能都市

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今日も空は赤い。真っ赤だ。 これが夕陽によるものだったらどれだけいいだろう。そういえばここしばらく、太陽を見ていない。 雲ひとつ浮かんでいない奇妙な空を仰ぎながら、僕は唇の端に付着した雫をぺろりと舐めた。…無味。 視線を上から下へ移動させ、足元に落ちていた小さくいびつな灰色の小石を拾う。磨いても光ることのないただの小石。使い物にならない。 「低級のクズ魂(こん)か。消す価値もなかったな」 舌打ち混じりに呟いて、僕は手に持った小石をぐっと握り潰した。意外と簡単に小石は粉々の灰と化した。 ふう、と息を吐いて灰を飛ばす。ここでは自然の風は滅多に吹かないので、灰はあまり遠くへ飛ばずに下へ落ちた。 「ああ疲れた。…寝よう」 灰が地面に溶けて消えてゆくのを見届けてから、僕はそっと意識を手放した。
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